講習団体の要件REQUIREMENTS FOR TRAINING ORGANIZATIONS
講習団体として航空局ホームページに掲載されるためには1.~5.の要件を満たし実績と書類をまとめ、願出書と一緒に国土交通省に提出し、国土交通省の確認を受けなければいけません。同じく航空局ホームページに掲載されている管理団体の傘下に入り、管理団体の認定を受けて掲載の要件を満たしている場合は、原則管理団体が講習団体の願出書提出を取りまとめて行ってくれるので講習団体はとても楽です。
- 管理者・教官を配置すること
- 組織運営、スクールとしての講習実績
- 講習等の実施方法、カリキュラムについて
- 管理方法・体制、技能証明書について
- 講習マニュアルの作成
1. 管理者・教官を配置すること
管理者の要件
- 講習と技能認証(今後「講習等」といいます。)に係る運営を適正に管理できると認められる者
- 講習等を統括的に管理できる権限及び責任を有すること
- 講習等について必要な知識及び経験を有すること
管理者はスクールの責任者です。教官(一般的に講師、インストラクターと呼ばれています)への教育や、管理団体の傘下に入らない場合はカリキュラムの作成・管理など、講習等についての知識や経験やスクール運営の一切の管理ができなければいけません。そのため、相応の経歴・実績が必要になります。
教官の要件
- 講習等を適切に実施できると認められる者
- 飛行経歴が50時間以上である者
- 教官任用教育(担当する講習等の内容、教育及び審査技法並びに担当する講習等のオブザーブ)を受け、管理者が講習等を適切に実施できると認めた者
教官はスクールの講師、インストラクターです。特に実技講習は教官一人当たり指導できる受講生の数に限界があるので、受講生の数に応じて教官も配置する必要があります。また、事前に管理者や管理団体から教育を受け、適切に講習等を実施できるようにしなければなりません。航空法の飛行許可申請では10時間以上の飛行実績が必要ですが、教官はその5倍の50時間以上が必要です。教官任用教育を受け管理者が教官を講習等を適切に実施できると認め、指名する必要があります。
2. 組織運営、スクールとしての講習実績
運営方法は講習団体毎に様々ですが、適切な組織運営であることが確認できなければいけません。
講習等の責任体制と役割が明確に定められていること
例えば以下の項目などです。
- 講習等に使用する機材や教材の維持管理、修理や点検の体制
- スクール受講者の管理体制
- 技能認定証の発行、技能認証者の管理体制
- 学科、実技講習と試験体制
- 管理者、教官(インストラクター)やその他講習に関わる人の役割
講習等を1年以上行っていること、または、これまでに100人以上の講習等の実績を有し、継続して運営できる能力を十分有すると認められること
講習実績が全くない場合は、この要件が一番時間かかります。管理団体の傘下になってカリキュラムや運営等のサポートを受けたとしても、この要件は無視できません。規模が大きい会社、全国展開していて今後内製化したい会社などは比較的短期間でこの要件を満たすことが可能ですが、大変であることに変わりはありません。
講習等に必要な施設と機材を使用することが可能であること
講習を行うためには、学科と実技講習に利用する施設が必要です。特に実技で利用する施設については、屋外施設しか準備していないと天候に左右され雨などで延期せざるを得ない状況になってしまうため、屋内施設も準備しておきましょう。屋内施設は体育館、大きな倉庫やフットサル場などを活用している団体が多いです。
※フットサル場は網で囲われているところもありますが、四方と天井がしっかり囲われていれば、屋内施設として活用できます。風も少し入ってくるので、屋外に近い状況で講習ができるのでオススメです。
機材については様々ですが、ドローン本体やバッテリーやプロペラガードのような付属品などが挙げられます。団体によっては総重量200グラム未満のドローン(トイドローン、マイクロドローンなどと呼ばれています)を実技で活用しています。
屋外の実技施設しかない場合は、200グラム以上のドローンを飛ばす際は航空法の許可申請が必要になる可能性があるので、実技施設を選定する際には気を付けた方が良いです。講習での飛行でも、航空法に抵触する場合は許可が必要です。たまに、「屋外だけど地面とドローンがワイヤーなどで繋がれている場合は航空法の許可はいりませんよね?」というご質問をいただきますが、普通に許可が必要です。特に首都圏ではほとんどの場所が航空法の許可が必要になるので、屋内の実技施設は重宝します。
※今後、法改正で基準が200グラムから100グラムに変更される予定です。
こちらは東京都の地図です。
赤色が人口集中地区、黄緑色が空港等の周辺空域です。
屋外で200グラム以上のドローンを飛行される場合、これらの空域では原則航空法の許可が必要になります。空港等の周辺では場所毎に許可が不要な高度が設定されている(高さ制限といいます)ので、必ずしも許可が必要なわけではありませんが、首都圏ではほとんどの場所が人口集中地区に指定されているので、いずれにしても許可が必要です。
3. 講習等の実施方法、カリキュラムについて
「講習等」というのは、要するにスクールのカリキュラムと技能審査(実技試験)のことです。カリキュラムについても最低限盛り込まなければならない内容が決まっています。
講習課目は、学科(座学)と実技の内容を含むこと
最終的に実技試験に合格すると、技能認定証が発行されます。技能認定証があると、航空法の飛行許可承認申請をほんの一部(講習団体で学び、確認できた操縦者に関する部分)省略することができます。カリキュラムは座学と実技両方必要だということをほぼ全てのドローンスクールが認識しているので、特に問題はないでしょう。
講習期間は2日間以上とし、適切な時間数が定められていること
講習期間と受講形態は団体によって幅があり、最低限2日間のものや、数ヶ月間の中で好きな時間で受講できるものなど様々です。オンラインで受講する座学や、一部の実技をシュミレータで学ぶ団体もあります。1日だけのコースは国土交通省の確認を受けているカリキュラムではないです。
国交省のホームページに掲載されているドローンスクールでも複数のカリキュラムを取り扱っている団体があります。国交省から「確認を受けているカリキュラム」と「確認を受けていないカリキュラム」があるので、受講する方で技能認定証が必要な場合は「確認を受けているカリキュラム」はどれなのか事前にスクールに確認するようにしましょう。
講習後に実技による技能審査(実技試験)を行い、技能認証の証明書を発行すること
この実技試験は国交省で出している審査要領に書いてある飛行形態毎に必要です。具体的に言うと基本飛行、夜間飛行、目視外飛行(FPV等)及び物件投下(農薬散布等)です。実技試験合格だけでなく、飛行時間が10時間以上あることを飛行記録等で確認して初めて技能認定証が発行できます。飛行時間10時間以上を確認していないスクールは単にこのルールを守っていないか(あってはならないですが)、国土交通省の確認を受けていないカリキュラムです。
講習の内容が、飛行形態に応じて定められている審査要領の内容を含んでいること
使用する教材、カリキュラムが審査要領の内容を含んでいることが条件です。
最低限以下の内容以上のものが必要です。
【学科(座学)講習】
1.航空法関係令にする知識(無人航空機に関する事項に限る。)
2.安全飛行に関する知識
- 飛行ルール(飛行の禁止空域及び飛行の方法)
- 気象に関する知識
- 無人航空機の安全機能(フェールセーフ機能等)
- 取扱説明書に記載された日常点検項目
- 自動操縦システムの構造及び取扱説明書に記載された日常点検項目
- 無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制
- 飛行形態に応じた追加基準
【実技講習】
1.飛行前の確認
- 周囲の安全確認(第三者立入有無、風速 、風向等の気象等)
- 燃料又はバッテリーの残量確認
- 通信系統及び推進系統の作動確認
2.遠隔操作により飛行させることができる無人航空機の場合あっては、(1.)の能力に加えて、GPS等による位置の安定機能を使用せず次に掲げる飛行を実施できる能力
- 安定した離陸及び着陸
例:操縦者から3m離れた位置で、3mの高さまで離陸し、指定の範囲内に着陸 - 安定して次に掲げる飛行
- 上昇
- 一定の位置で高度を維持したホバリング(回転翼航空機に限る 。)
例:飛行させる者の目線の高さにおいて、一定時間の間、ホバリングにより指定された範囲内(半径1mの範囲以内 )にとどまることができる能力 - ホバリング状態から機首の方向を 90 °回転(回転翼航空機に限る。)
- 前後左右移動
例:指定された離陸地点から、前後方向に20m離れた着陸地点に移動し、着陸する飛行を5回連続して安定行うことができる能力 - 水平面内での飛行
例:一定の高さを維持したまま、指定された地点を順番に移動する飛行を5回連続して安定して行うことができる能力 - 下降
3.自動操縦により飛行させることができ無人航空機の場合あっては、(1.)の能力に加えて、次掲げる能力
- 自動操縦システムにおいて、適切に飛行経路を設定できること。
- 自動操縦システムによる飛行中に不具合が発生した際に、無人航空機を安全に着陸させられるよう、適切に操作介入ができること。なお、操作介入が遠隔操作による場合は、(2.)の能力。
4.飛行形態に応じた操縦能力
- 人又は家屋の密集している地域の上空における飛行、地上又は水上の人又は物件との間に30mの距離を保てない飛行、多数の者の集合する催し場所の上空における飛行及び危険物の輸送に係る飛行の場合
- 意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させるための能力
例:- 対面飛行により、左右方向・前後方向及び水平面内での飛行を円滑に実施できること
- 操縦者から10m離れた地点で、水平飛行と上昇・下降を組み合わせた飛行を5回連続して安定して行うことができること
- 8の字飛行を5回連続して安定して行うことができること
- 意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させるための能力
- 夜間飛行の場合
- 夜間、意図した飛行経路を維持ながら無人航空機を飛行させる能力
- 目視外飛行の場合
- モニターを見ながら 、遠隔操作により、意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること及び飛行経路周辺において無人航空機を安全に着陸させることができる能力
- 物件投下に係る飛行の場合
- 5回以上の物件投下の実績を有し、物件投下の前後で安定した機体の姿勢制御ができる能力
- 飛行形態に応じて必要な安全確保の体制を実施できる能力
4. 管理方法・体制、技能証明書について
管理する各種記録にはどのようなものがあるのか
例えばこのような書類です
- 技能認証の証明書(技能認定証)発行する団体名、操縦者氏名、技能確認日(実技試験合格日)、認証した飛行形態(基本飛行、夜間飛行、目視外飛行他)等の必要事項が記載された技能認定証を連番で管理する必要があります。
- 教官(インストラクター)の任用教育、技能認証に関係する記録書類講習を適切に実施できると管理者が教官を認めたことが分かる書類も含まれます
- 講習内容と技能審査の結果等を定期的に評価し、見直すための書類アンケート等をはじめとした、改善に繋がる内容のものです書類の管理方法については、電子データ・紙媒体で保管する場合で異なりますが、情報漏洩がしないようしっかりと管理をする必要があります。
5. 講習マニュアルの作成
最低限このような内容を含めたマニュアルを作成し、申請時に提出しなければいけません。今までの記事で説明した内容です。この講習マニュアルの他に、それを証明する書類を一式添付する必要があります。
- 管理者の氏名及び経歴
- 教官の氏名、経歴並びに教育及び飛行実績
- 講習等に係る責任体制及び役割
- 講習施設の概要
- 講習の内容、方法及び実績
- 技能認証の方法
- 講習等に係る記録の作成 、管理等の方法及び体制
- 講習等の定期的な評価及び見直し方法
講習団体として国土交通省ホームページに掲載された後は
無事講習団体として掲載された後も維持管理に必要な手続き等があります。
- 技能認定証の更新
こちらは有効期限を定めている場合に必要です。 - 3ヵ月毎(毎月10日まで)に技能認証を行った者
航空局に技能認証を行った者の一覧を報告しなければいけません。航空法の飛行許可承認を受けた後の飛行実績報告のようなイメージです。管理団体の傘下に入っている場合は、管理団体が取りまとめて報告します。 - 講習マニュアルの変更
講習マニュアルに変更があった場合も、該当箇所を変更前に航空局に報告しなければいけません。